疲労、全身倦怠感~体がだるい、重い、疲れがとれない~

体がだるくなったり、疲れがとれないのはどうしてですか

長時間の運動や仕事を続けると、誰でも疲れが出てきます。こうした疲労は末梢疲労と中枢性疲労に大きく分類することができます。末梢疲労とは、運動を続けたときに起りやすい筋肉などの疲れで、中枢性疲労は脳が疲れを感じている状態です。
この中枢性疲労では、長時間の考え事や精神的な緊張状態が続いたときに、脳の調整能力が十分に働かなくなって疲労を感じるようになります。その他、食生活の乱れや不規則な生活、運動不足が疲労の原因になっていることもあるでしょう。
そんなとき、十分な休息や睡眠をとることで疲労を回復できる場合は、生理的な疲労であり、病的な疲労とは言えません。しかし、十分な休息をとっても疲労が回復しない、全身のだるさや倦怠感が長く続くときは、その背景に何らかの病気があるかもしれません。
こころの病気の中には身体症状を伴うものが決して少なくはありませんが、身体症状が長く続く場合には、まずは身体疾患の面から受診するのがよいでしょう。疲労や全身の倦怠感が出てくる場合の主な身体疾患として、高血圧や貧血、糖尿病、悪性腫瘍など様々なものがあります。
一般的に、疲れがとれない場合は内科を受診することが多いでしょう。内科では、血液検査や胃の検査など、身体疾患についての検査を行います。そこで、とくに異常がみられない場合に、精神科や心療内科を紹介されることもあるでしょう。その結果、うつ病だと診断されることもあります。
こうしたことは、遠回りをしているように見えるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。逆に、うつ病の治療をしていて、たまたま体の検査をしたら、うつ病の背景に糖尿病があることがわかったということもあります。
ですから、身体症状について、体の病気の検査を行うのは患者さんにとってもメリットがあることなのです。
さて、疲労と関係が深いこころの病気には、うつ病だけではなく、統合失調症や適応障害、不安障害、身体表現性障害など、様々な疾患が考えられます。
たとえば、うつ病はエネルギーが消耗する病気だとよく言われます。うつ傾向を示す病気にもいろいろな種類がありますが、大きなストレスを受けながらも、責任感の強さから懸命に頑張り過ぎた場合に、疲労が蓄積していると考えられます。意欲が減退するとともに、倦怠感に覆われ、症状が重い場合には、疲労からまったく動けなくなることがあります。非定型うつ病の特徴のひとつに鉛様麻痺という症状がありますが、これは体が鉛のように重く感じて、立ち上がるのにも苦労するほどの疲労感を覚える症状です。
統合失調症では、幻覚や妄想によって、緊張や不安が強くなり、そこから疲労が生じてくることも多いでしょう。外出するだけで、いろいろな刺激に耐えられなくて、疲れてしまうことも少なくありません。
適応障害や不安障害等も同様に、不安や緊張の連続から、心身ともに疲れてしまうといったことが起こります。

自分の疲れがとれないときはどうすればいいですか

ただ疲れているだけだから、休めばそのうち治ると考えるかもしれません。しかし、休んでも疲れがとれない、疲労感が長く続く、生活に支障が出ているといった場合は、何らかの病気が背景にあるかもしれません。そんなときは、早めに医療機関を受診したほうがよいでしょう。
疲労感が続くとき、最初は内科など身体科を受診するのがよいでしょう。そこで一通りの検査を受けて、身体面での異常が見られない場合、ストレスの影響やこころの病気の可能性が考えられます。
こころの病気の場合でも、心理面よりも疲労感のほうに、より苦痛を感じることもあるでしょう。あるいは疲れているから、気分が優れないと自己判断してしまうこともあります。たとえば、「仮面うつ病」では、心理的な症状よりも身体症状が前面に出てきます。疲労はその代表的な症状です。
強い疲労感の背景にうつ病が潜んでいながら、精神科を受診しないケースもあります。しかし、疲れの原因がうつ病である場合は、うつ病の治療を行うことで、身体症状も軽減していくでしょう。
軽々に自己判断せずに、しかるべき医療機関を受診することが大切です。

身近な人が疲れを訴えるときはどうしたらいいですか

身近な人が、「疲れた」という言葉をくりかえしていても、「疲れぐらい誰でもある」と思うかもしれません。いつも「疲れた」と言われ続けると、うんざりしてしまうことも考えられます。疲れを感じることを、怠けのように思う人もいるかもしれません。しかし、単なる疲れだと思っていたら、その背景に身体疾患や精神疾患が隠れていることもあります。
あなたの身近な人が「疲れ」の症状を長く訴えている場合、まずは体に何か病気がないか検査したほうがいいと、受診を勧めてください。本人も気のせいだ、休めば何とか回復すると言って、病院には行きたがらないことが多いかもしれません。しかし、何らかの病気の可能性も否定できません。疲労の背景には様々な病気が考えられることを伝え、身体面での異常がみられない場合は、さらに精神科など、こころの病気に関する医療機関を受診するように勧めましょう。
そして、こころの面だけでなく、体の症状についてもその苦しさに共感しながら支えてあげてください。

出典:厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/symptom1_1.html

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