老年期とは65歳以上をさします。日本では急速に高齢化者を迎え、平成18年の老人人口は総人口の20.8%を占めています。老年期には身体機能面、精神機能面で老化現象が生じてきます。様々な身体・精神機能面は20~30歳頃を頂点として、以後次第に低下しはじめますが、それらを顕在化するのは老年期といえます。
1-1 身体機能の老化
身体機能の老化では、頭髪、眼の調整力、聴力、運動機能など多くの面に現れるが、個人差が大きい。特に運動機能については、よく動いている人では衰えが少なく、寝たきりになると急速に老化していきます。
1-2 精神機能の老化
精神機能の老化は、神経系の老化によるもので、知能の低下、記憶機能の低下、人格変化が問題となります。このうち人格変化については、自発性の低下、柔軟性の低下、易怒などの感情調節障害、社会的内向性などが起こりやすいとされます。また、一般に老年期には、性格の欠点が極端化して現れる機構があるといわれていますが若い頃の性格の偏りがとれて円満になる場合もあり、これらは個人差があります。エリクソンによると、老年期の課題は統合性の確立であるとしています。
1-3 社会的な老化
老年期には個人を取り巻く環境にも変化が起こり、社会や職場からの引退と社会的地位の喪失、収入の減少、対人関係の狭小化、家庭内での中心的地位の喪失、嫁や婿との葛藤、配偶者との死別などから疾病が生じやすい時期です。社会や家庭から期待される役割は少なく、時には無用なものとして疎外されることもあります。このような環境の変化と身体機能・精神機能の老化が絡み合って、老年期の心理は不安、孤独、抑うつに傾き、心理的危機を生みやすく、最悪の場合は自殺に至ることもあるのです。