幼少前期1

幼少期は1歳から6歳までの期間で、この間の歩行、走行をマスターし、話し言葉を完成させ、社会性を獲得します。変化発達の著しいことから、この時期を幼少前期(1~3歳)と学童前期(3~6歳)に分けて基本的事項と精神面の問題について説明します。

目次

1-1 幼少前期とは

幼少前期2

幼少前期は基本的生活習慣の自立の時期で、基本的生活習慣とは食事、排せつ、睡眠、着衣、清潔、5領域をいいます。子どもの自立には愛情を持った適度なしつけが重要ですが、極端なしつけは病的清潔などの強迫的性格や強迫神経症との関連が指摘されています。基本的生活習慣のうちで排泄のしつけは重要であり、フロイトは幼少前期の2~3歳を肛門期とよび、エリクソンは自律の時期と呼びました。

1-2 学童前期とは

社会性

3歳頃からは自分の姓名、性別が言え、簡単な会話ができるようになります。自我の芽生えとともに、親の言うことを聞かなくなり、何でも反対して自己を主張するなど憎まれ盛りの状態を示します。しかし、これは自主独立性発達の一過程として不可欠であり、第1反抗期のない場合は後で問題行動をおこす場合があります。4歳頃からは数を数えたり、図形を模写するようになります。フロイトは学童前期の3~6歳を男根期と呼び、エリクソンはイニシアチブな時期とよびました。

1-3 前操作期とは

ピアジェは2~6歳をまとめて前操作期とよび、象徴化の機能が著しく発達するとしています。象徴的思考の段階で、頭に思い浮かべながら思考する段階であり、これは幼稚園で行った遊戯を帰宅後に模倣したり、積み木を電車に見立てる遊びでみられます。言語も急速され、遊びの中で言葉を用い、特にひとりごとを話す様子がみられることを自己中心的思考と呼んでいます。

1-4 幼児期の精神面の問題

学童期の悩み

乳児期に特に問題となるのは特に親子問題です。「三つ子の魂百までも」の如く、性格のうち後天的に形成されるものは、この時期に主として形成されるので、この時期における養育者や養育態度は人格形成にとって最も重要です。子どもは、授乳、抱擁、愛撫などのスキンシップによる母親の愛情の保証があってはじめて安定した精神発達ができると言われています。

乳幼児期は離乳、トイレット・トレーニング、行動制限など「しつけ」として多くの欲求不満を経験しますが、これらの訓練が親の愛情のもとに適切に行われれば、子どもは自分の欲求を抑制することを学び、欲求不満に対する耐性が高まるといいます。もし、過保護、放任など養育の欠陥のため、自分の欲求を抑制することができず、欲求不満に対する耐性が低いと神経症を引き起こすことさえあるのです。

(1)神経症

大人の神経症と異なり、子どもの神経症は精神機能が未分化なため、症状は行動障害や身体障害として表現される。具体的には、指しゃぶり、爪かみ、チック、吃音、選択的緘黙などが挙げられる。

(2)発達障害

発達障害とは子どもが成長とともに発達させていく知能や精神活動、運動機能などが、何らかの理由で遅れたり、障害されたりすることをいう。DSM-Ⅳ分類では(1)特異的発達障害(学習障害LD)、(2)広汎性発達障害(自閉性障害、アスペルガー症候群)、(3)精神遅滞(知的発達障害)がある。そして、これら3つの発達障害のうち、知的機能が正常範囲(おおむねIQ70以上)の場合を軽度発達障害という。

(3)注意欠陥多動性障害

注意欠陥多動性障害(ADHD)とは、従来「微細脳機能損傷」の病名で知られていた。これは極端に落ち着きがなく注意散漫な子どもの脳の写真や脳波を調べても異常がないことから脳に目に見えない小さな病変があると考え、微細脳機能損傷と呼ばれていた。主な病状は多動と不注意であるが、他に学習障害や軽い運動障害を伴うこともよくあり、その病態や治療法に様々な研究がなされ1980年に「注意欠陥多動性障害」という病名と診断基準が示された。

(4)虐待

子どもに対する虐待は1962年アメリカにおいて小児科医ケンペらの論文「殴打児童症候群」が発表され、これが発火点となり、欧米で社会問題として取り扱われる。日本では1970年代になって初めて翻訳されて報告されたがあまり関心を持たれず、あくまで児童福祉の特別な一分野としての扱いに留まっていた。1990年代に入ると、児童相談所における児童虐待相談処理件数が増加の一途をたどり、最近になり児童虐待が大きな社会問題となっており、児童虐待の防止に関する法律が2000年に制定された。

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