初老期

目次

1-1 初老期において必要な課題とは

責任

初老期の課題は(1)職業上の知識や技術、子育ての知識や技術を次の世代に伝達すること(2)自らの限界を認め、老いを受容することです。特に後者に関しては女性では閉経期にあたり、ホルモンバランスの乱れから更年期障害がおこり、男性でも白髪などの老化の徴候が始まり、体力にも陰りがみられ、新しい環境への適応力も低下します。

しかし、初老期は、職場でも家庭でも最も責任の重い立場にあり、周囲から期待されることも多いので、身体的にも心理的にも負担が大きいといえます。職場では空間管理職として上層部と末端との間で板挟みになったり、「新人類」といわれる若い部下との世代間ギャップを感じたりするでしょう。家庭では子どもの養育問題や経済的問題等で悩みが多く発生する時期です。

この時期の問題としては、成人期に引き続き、職場や家庭でのエピソードは重要です。年功序列の秩序が崩壊してきている企業では、中高年の管理職を襲う職場不適応状態が引きおこります。

1-2 初老期における精神面の問題

初老期の悩み

退行期うつ病

単極性うつ病のうち50歳以後の初老期に初発するものを初老期うつ病ないし退行期うつ病という。発症要因として老化に伴う身体的・心理的・社会的な喪失体験が関与しています。その特徴として次のような点が挙げられます。

  1. 単極性うつ病である
  2. 不安、焦燥感が目立ち、これがひどくなると興奮となる激越性うつ病となる。また妄想をともなうこともある
  3. 感情面のうつ症状が目立たないかわりに、不眠、疲労感、めまい、頭痛、肩こり、食欲低下、便秘、下痢などの身体症状として訴える場合がある。
  4. 抑うつ感情が目立たず、自発性の低下、意欲の低下などから一見認知症と間違えることがある仮性ないし偽認知症。これは抗うつ薬に反応することから真の認知症と鑑別できる。
  5. 経過が長引き、治療に抵抗する場合がある。

空の巣症候群

初老期の女性における抑うつが主とした、心身症状を「空の巣症候群」といいます。子どもが中高生くらいまでの家庭は母親中心、子どもを絆として夫婦関係も良好であっても、母親が40代ないし初老期になる頃、子どもは高校、大学に進み母親離れを試みます。また、夫が仕事や付き合いにかまけて家庭を振り返らないなど。子どもや夫本位に生活してきた夫婦の心にポッカリと穴があき、急に自分の愛の巣が空っぽになったと実感します。そして抑うつ、イライラ、食欲不振、めまい、頭痛などの症状が出現したものが空の巣症候群といわれています。

自殺

自殺は社会一般にみられる病理現象であり、いずれの年齢にもみられるが、中高年者の自殺が漸増しているという現状がある。

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