人間の本当の幸せってなんなのだろう、と頭のなかで悶々と考えた経験のある人は案外と多いのではないでしょうか。幸せという言葉とは少しニュアンスが違いますが自己実現という言葉を聞くとまず間違いなく出てくるのは「マズローの5段階欲求」ではないでしょうか。
今回はマズローの5段階欲求と、ベストセラー本の『日本で一番大切にしたい会社』日本理化学工業株式会社の会長の言葉を引用して説明させていただきたいと思います。
目次
1-1 改めまして、マズローの5段階欲求
マズローは人間には5つの欲求があると考えました。
- 生理的欲求
- 安全への欲求
- 愛と所属への欲求もしくは、社会的な欲求
- 自我と自尊心への欲求
- 自己実現の欲求
この理論はもう聞き飽きたという人も多くいると思います。知っているようであまり知らない人も多いのですが、1~4と5の間にはとても大きなギャップが存在するのです。
それは簡易的に言えば、満たされないものを補うための欲求か補うことができない欲求かということです。
1-2 欠乏動機と存在動機とは
上記の1~4は欠乏動機と言われ、5は存在動機と言われています。
今までの心理学では、行動の原因としての動機を空腹、異性への性衝動、外敵に対する自己防衛など特定の欲求を受動的に満たす1~4のような欠乏動機に重点を置いてきました。しかし、マズローはそれだけで人間の行動の動機は説明できないとして自発的な成長や充実を目指す能動的な欲求を想定して5の動機を存在動機と呼んだのです。
個人的な見解ですが、1~4の欠乏動機は外発的動機づけ、5は内発的動機づけとして考えることが一番説明しやすいのですが、マズローは、動機づけというより人間の長期的な発達によるものという見解を持っているようです。
1-3 人にとっての本当の幸せって
「人間の幸せは、 人に愛されること、人にほめられること、人の役に立つこと、人から必要とされること」 これに尽きる。そして、愛されること以外の3つは、「働くこと」を通じて手に入れることができる。
ベストセラーにもなった「日本で一番大切にしたい会社」の日本理化学子工業株式会社の会長の言葉です。この言葉は仕事に限らず生きていくうえで重要なことを教えてくれているようです。
この4つの言葉はマズローの1~4までの欲求を満たす要因になるように感じます。それでは働くうえでの本当の自己実現とはいったいなんなのでしょうか。
これらの言葉は全て「人に」というフレーズから始まります。人というものは自分以外の対象をさします。そのため、その「人」がいないと成立せず、またその「人」の言動に依存してしまう傾向があるのです。
しかし、これら4つの言葉は、人が人と共に生き、幸せを感じるうえで偉大な力になる要素であることは間違いありません。
1-4 本当の意味での自己実現とは
それは「愛すること 褒めること 助けを求めること 必要とすること」だと思います。この言葉はさきほどの4つの幸せを反対にしただけです。けれどもとても大事な言葉ですのでこちらも理解しておいて損はないかと思います。
これはさきほどの言葉と違い「誰かを・誰かに」という言葉が入ります。人に愛されたいと思ってもすぐに愛してもらうことはできません、人に褒めてもらいたいときに絶対に褒めてもらえるとは限りません。しかし、人を愛すること、人を褒めること、人に助けを求めること、人を必要とすることは自分しだいでいつでも行うことができるのです。
1-5 企業のマネージメント層に必要な力
この力は企業の経営者・管理者層に最も必要な要素ではないかと私は思います。
もちろん家庭での子育てや夫婦間の問題にもいえることですが、相手を必要とすることは1~4の欲求にもあるように、人にとって本当に幸せなことです。
もしあなたの上司が1~4の欲求を満たすために仕事をしているなら、上司は部下に対して自分の自尊心を満たすために行動する場面が多くみられるでしょう。
上司が部下に対して自尊心を満たすために行動すると、上司と部下の共依存が生じます。この状態では企業にとっての推進力も減退し、上司・部下ともにお互いの能力を高め合うことはできなくなってしまいます。
他者を導く存在である立場にいる役職の人物は、相手の能力を最大限認め、必要とすることが最も重要な役割ではないかと思います。
1-6 欠乏動機と存在動機はどちらも大事
マズローの5段階欲求理論にアルダーファは以下のことを付け加えています。
- 5段階を生存欲求、関係欲求、成長欲求とERG理論として提唱した。
- 低次の欲求が満たされると高次の欲求が活性化する。
- 低次の欲求が満たされないとストレスがかかり、低次の欲求を再度満たそうとする。
- これら2つ以上の欲求が同時に働くことがある。
ここからも分かるように欠乏動機1~4と存在動機5はどちらも欠かすことができないもののようです。
まとめ
人が生きるうえで満たされないものというものは人と比較すれば際限がないものが多いです。その途中で何らかの形で自分自身と折り合いをつける経験があれば、自己実現に近づいていくことが多いように感じます。また、これらの欠乏動機は自分自身から発するというよりも他者に依存している部分が多く、行動制限も伴います。個人・家庭・組織・社会という枠組みのなかで様々な価値観の板挟みにあったり身動きがとれないようになった際の心理的負担ははかりしれないものです。
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