中国の昔話から学ぶ認知行動療法における自動思考の考え方

不機嫌なんでいつも自分はこんな考え方をしているのだろうと普段から自問自答している人やそうでない人、一つの出来事をどのように受け取るかは、その人によって大きく異なっているものです。

ものの見方を「認知」といい、その認知に働きかけ非合理的な悩みやストレスを軽減させていこうという心理療法を「認知療法」もしくは「認知行動療法」といいます。皆さんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

現在では一部の厚生労働省の定める施設基準を満たし、専門の医師のもと(ほか様々な制約はありますが)あれば、認知行動療法を保険診療が受けられるようになってきています。

あなたは、何か出来事が起こった際にいつも考えてしまうパターンというものはないでしょうか。瞬間的に脳裏に浮かぶイメージや考え方のことを認知行動療法では「自動思考」と呼んでいます。今回は中国の昔話をもとに説明していきたいと思います。

目次

1-1 中国の昔話「人間万時塞翁が馬」とは

中国

中国の昔話です。昔、国境の砦の近くに一人の老人が住んでいました。ある日その老人が飼っていた馬が、北方の他の国へ逃げてしまった。周りの人々は慰めたが、老人は「これが幸いとなるかもしれない」と言った。

やがて、逃げた馬が北方から別の駿馬をひきつれて帰ってきた。人々がお祝いをすると、老人は「これが禍となるかもしれない」と言った。

やがてその家には良馬が増えたが、老人の息子がその馬から落ちて足の骨を折ってしまった。人々がお見舞いをすると今度は、「これが幸いとなるかもしれない」と言った。一年が過ぎるころ、隣国との大きな戦争がありほとんどの人が戦死したが、この息子は足が不自由なため戦争に召集されず、父と共に生きながらえることができたというお話です。

1-2 さてあなたはこのような時どのように考えますか

この話には馬が逃げる、馬が駿馬を連れて戻る、息子が怪我をすると3つの出来事があります。もちろん、これは昔話ですので連れて帰ってきた馬がとんでもない暴れ馬で手を焼く、また、怪我は治らず悪くなる一方ということもない話ではありません。さてあなたはこのようなことが起こったとき実際どのように考えますか?

1-3 スキーマとは

認知行動

スキーマは今までの生育歴のなかで培ったたくさんの情報のまとまりです。このスキーマが「自動思考」を形成していると言われています。

今までの培った環境のなかで、何かが逃げるということにマイナスのスキーマを持っていると、馬が逃げた際に、「逃げてしまったら、戻らないし不幸の前触れに違いない」という自動思考につながるかもしれません。

1-4 人は変えるより自分の考え方を変える方が生きやすい

なんでここまで言っているのに分かってもらえないのだろう、言っているように動いてよ、と人を変えようとした経験のある人は多くいると思います。ですが、自分の外の環境にいる人というものはそう自分の思うようにコントロールすることは難しいものなのです。もし、コントロールできたとしても互いの依存関係を強める結果となり、身動きがとれないようになってしまいます。

自分自身が影響できる範囲というのは限られています。まずはじめは自分の考え方をコントロールできるようになることが大切なのです。

自分、子ども、夫婦、両親、知人、友人、同僚と人は人を無意識のうちに影響しているものです。個人、家庭、組織、社会、地球、宇宙は広げすぎかもしれませんが、個人はどこまで影響できるのでしょうか。

この話に登場する老人も変えることのできない現実を受け入れつつも柔軟な考え方を保持することができているのです。

人を変えるよりも自分の考え方を変える方が近道になることも多いように思います。

1-5 ポジティブすぎてもネガティブすぎても生きにくい!?

喜び

この話に登場する老人は、一見するととてもポジティブにも見えますし、ネガティブに見える発言もあるように思います。これは考え方がポジティブ過ぎてもネガティブ過ぎてもいけないということを教えてくれているようです。

ここからも分かるように「ふり幅」が重要だと私は考えます。考え方をある1つの点でとらえるのではなく、線で結びつける。こうすると自由に考え方を移動させることができるのです。

最近流行りのスポーツ選手のメンタルトレーニングなどでは一瞬やその試合の間だけなどで最大限の能力を発揮する思考法などではポジティブな見解だけでも有効かもしれませんが、人はどちらかに偏り過ぎた極端な思考だけでは、何らかの形で日常生活に支障をきたす場合が多いのです。

まとめ

人間万時塞翁が馬 人生の幸・不幸は、変わりやすく予測できないということの例え話です。時にはポジティブやネガティブすぎるくらいでないと乗り切れないような出来事に遭遇するかもしれません。ですが、ネガティブすぎても、またポジティブすぎても人は生きにくさを感じることが多いように思います。考え方を1つの点でとられるのではなく、線で結びつける。そして、「かもしれない」というキーワードを頭の隅に置いておいてもいいのかもしれません。

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