心のクセを知ると人生は少しずつ変化しはじめる

本の積み重ね

人生というと大きなテーマですが、毎日の生活が積み重なり、人の営みのひとつひとつが人生を構成しています。どうでしょう。そう考えると、人生を変えることも可能かもしれないと思っていただけたでしょうか。

人生を変える良い習慣を身につけるためにはまず、自分を知ることからはじまります。そして、心のクセを理解することが、自分を知ることや人生を変えることにきっと役立つでしょう。

笑顔

目次

1-1 哲学者ウィリアム・ジェームズの言葉

私の世代の最大の発見は、
人間は心の持ち方を変えることによって、
人生をも変える事が出来るということだ。

ウィリアム・ジェームズ(William James)

この名言はアメリカを代表する哲学者・心理学者のウィリアム・ジェームズ(William James)の言葉です。有名な言葉ですので、聞いたことのある方も多いでしょう。そして私が生きるうえで大事にしている言葉でもあります。

偉人

1-2 まずは心を理解することからはじめましょう

心を変えるにはまず心を理解することからはじまります。心が脳にあるというのは現代人の常識となりつつあります。心については心理学の歴史のなかで、科学からスピリチュアルな要素まで様々な議論が行われてきましたが、まだまだわかっていないことが多いのが現状です。現代の心理学の実験研究をみると、行動から心のメカニズムを推論することが盛んに行われており、それと同時に無意識的な心のはたらきに着目した研究が増えてきています。

1-3 それでは無意識とは何なのでしょうか

われわれの持つ可能性に比べると、現実のわれわれは、まだその半分の完成度にも達していない。われわれは、肉体的・精神的資質のごく一部分しか活用できていないのだ。概して言えば、人間は、自分の限界よりも、ずっと狭い範囲内で生きているにすぎず、いろいろな能力を使いこなせないままに放置しているのである。

ウィリアム・ジェームズ(William James)

人間は意識できている範囲以外を無意識と言います。このように人は自分が持っている能力のほとんどが無意識化にあり、活用できていないのです。

本

無意識で有名なC.Gユングは自我と自己の相互作用で成長し、球的完全性へ向かう過程をユング心理学では「個性化の過程」あるいは「自己実現の過程」と呼んでいます。

1-4 あるがままの現実を受け入れられたら人は悩まない

目を覆う

物事をあるがままの姿で受け入れよ。起こったことを受け入れることが、不幸な結果を克服する第一歩である。

ウィリアム・ジェームズ(William James)

物事をありのままに受け入れることは簡単なことのように思えますが実はとても難しいことなのです。さきほどユングが意識は自我が司るといいました。

自我には4つの機能があり、現実検討機能、統合機能、執行機能、防衛機能と分けられています。今回はこれらのなかで防衛機能に着目してみましょう。ありのままの出来事を受け入れられないとき、人はしばしばこの防衛機制を利用して、自分自身を保護しているのです。事項では防衛機制の種類とその機能について詳しく記します。

波

1-5 人間の防衛機制とは

自分の偏見を組み立て直しているにすぎないのを、「思考」していると勘違いしている者が非常に多い。

ウィリアム・ジェームズ(William James)

ロック

自我の防衛機制とは、現実をありのままに受け入れると自我が脅かされる可能性のあるときに、現実を歪曲させたり、否定したり無視したりして、自我の都合のよいように受け入れる機能であり、自分自身を守るための大切な保護機能でもあります。以下によく用いられる防衛機制についてご紹介します。

取り入れ
自分にとって好ましい人、理想とする人の特性を取り入れて真似をし、それにより自己の欲求を図ることを取り入れ・同一化・同一視という。
反動形成
満たされない欲求を正反対の欲動によって打ち消すこと。
合理化
欲求が満たされない時、その耐えがたい感情を強引な理屈づけを行って処理しようとする。
知性化
欲動や感情を論理的あるいは抽象的に考えたり、それに関する知識を得たりなどして欲動や感情をコントロールする。
分離
強い感情をともなった観念から感情を引き離した状態をいう。
抑圧
容認しがたい自分の欲求を無意識のうちに抑えつけてしまうこと。
代理
無意識な欲求が満たされない場合、これを意識可能な別のイメージに置き換えることで欲求を満たすこと。
象徴化
無意識の観念、概念などを間接的な別の事物などで代理表現する機能。
補償
劣等感を克服するため、それとは別の面で価値を実現したり、弱点そのものを克服したりすること。
置き換え
受け入れがたい自己の感情を、対象を別のものに移すことで解消すること。
昇華
性欲や支配欲などの基本的欲求を社会的に容認された方法で解消すること。
投影
自己の欠点や攻撃性を他人の中に見出し、他人を攻撃することで自己の劣等感を攻撃性をもたないものとすること。
空想
現実には実現しない欲求を空想の中で満たすこと。
退行
ある程度の発達を遂げたものが、危機に際してより低い発達段階に「子どもがえり」して未熟な行動により当面の困難を回避しようとするもの。
否認
容認したくない感情、経験を実際には存在しなかったように振る舞うこと。
打ち消し
反道徳的な考えや行為などに伴う罪悪感を、これと反対の行為をすることで償おうとすること
行動化
情緒的葛藤やストレス因子に対し、内省をせず、実際の行動によって対処すること。

※人はこれらの防衛機制を複数利用しながら自我の統制をとっているのです。

鍵

1-6 一つ一つの防衛機制を認識することからはじまる

最初に述べた、人生を変えるためには心からという名言がありましたが、心を変えるためには一つ一つの「心のクセ」に気付くことが必要であると私は考えます。

スイッチ

心のクセとは、つまり、どの防衛機制がどんなタイミングやシチュエーションで現れるのかという、個性や特徴のようなものです。ここで重要なことは防衛機制に気付く必要はあっても、無くす必要はないということです。

その時々に、防衛機制が働いたということを認識することが重要です。私は自らがもつ「心のクセ」に気付くのに一番有効な手段は自らの気質を知ることであると考えます。なぜなら気質には特有のクセがあるからです。

コロコロ

1-7 結局、防衛がどう認識されるかは周囲の反応しだい

先ほど、防衛機制は自分自身に対する保護機能であって大切な機能だと述べたばかりですが、例えば、どれかひとつの機能ばかりが頻繁に働くようになってしまうとどうでしょうか。周囲からは、「変わった人だ。」とか「癖のある人だな。」と思われるだけかもしれません。

カバ

しかし、それを他者から指摘されたり、社会生活上の不利益(人間関係や業務の遂行に支障がある等)が生じた場合、悩んだり自分や相手を責めたりするかもしれません。もうお気づきですね。作用過多になると、保護機能であるはずの防衛機制は自分自身を苦しめる要因となってしまうのです。

一人ぼっち

反社会的な行動を起こしてしまう程になったり、社会生活が維持できなくなった精神状態に対して、基本的には医学では疾患名を付けます。治療上、多くの人を管理しやすいようにカテゴリーに分けているのです。防衛機制が働いたということを認識することもまた、自分自身を守る行為なのです。

私は防衛機制という心のクセを理解するうえで自分の気質や性格を理解することはとても重要なことであると考えています。

2-1 気質、性格とは

気質とは聞きなれない方も多いのではないでしょうか。一般的によく使われるのが性格だと思います。簡潔にいうと気質は生まれる前(先天的)から決定しているもの、性格は生まれた後(後天的)に形成されるものです。

図にするとこのような形で説明されることが多いです。

気質

2-2 代表的な気質分類にC.Gユングの性格類型論があります

カール・グスタフ・ユングは、スイスの精神科医・心理学者。深層心理について研究し、分析心理学(通称・ユング心理学)の理論を創始した医師です。ユングが提唱したものに性格類型論というものがあります。

性格類型論とはユングの性格分析における外向性と内向性、人類全体に共有される普遍的無意識(集合無意識)とその元型を前提とする分析心理学を構想したC.Gユングは、外向性内向性に大きく分類される性格心理学を考えました。

人間の性格傾向を、典型的で明確な特徴を示すいくつかのパターンに分類しようとするユング心理学(分析心理学)の「タイプ論」とも言われる性格分析理論では、性格心理学でいうとクレッチマーの体型性格理論と並ぶ典型的な類型論です。

2-3 世界で最も使用されている心理テストMTBI

世界

MTBIは、ユングの心理学的類型論をもとに、1962年に米国のブリックスとマイヤーズによって研究開発されました。自分と周囲の人との違いを知ってお互いに尊重しあえることを目的に作られた、自己理解メソッドです。

また、MBTIは、人の成長にかかわる場面ならどういう場面でも有効といわれています。たとえば、自己理解研修、臨床カウンセリング、キャリアカウンセリング(キャリア開発)、コミュニケーション研修、チームビルディング、リーダーシップ開発、就職・再就職支援、異文化カウンセリング、学生相談、教授法など。特に、欧米諸国では、人材育成、キャリアカウンセリング分野で、標準的な検査として、全世界で受検者は毎年約500万人と多く、世界で一番利用されています。

まとめ

本当に世の中にはいろいろな人がいます。まったく同じ考え方を持ち、同じ性格の人というのは絶対にいないと思います。知らずしらずのうちに自分の心のクセの通りに動かされている方も多くいると思います。そのためには自分にはどのようなクセがあり、生まれながらの気質や生まれてからの性格がどのように関わっているのだろうと考えてみることも必要なのかもしれません。私の経験上気質を変化させることは極めて困難ですし、変える必要もないように感じています。ですが、後天的な性格というものは考え方次第で変化は無限大だと思います。自分が本来持っている気質、生まれた後に身についた性格を知ることで、「変わる必要のない自分と変えられる自分」が明確にみえてくるのではないでしょうか。そうすることで無理のない範囲で自分の人生を変化させることができるのではないでしょうか。

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