内観療法の理解。してもらったこと・して返したこと・迷惑をかけたこと

内観療法は森田療法とともに、日本で生まれた数少ない精神療法のひとつです。

日本庭園

目次

1-1 子どもの頃に出来上がった心のクセ

赤ちゃん

内観では主に過去に親(療育者)に対しての自分の振る舞いや、親とのやりとりを思い出していきます。なぜなら親に対する心の態度が、そのまま他者への心の態度になるからです。

過去の対人関係を振りかえり、真実の自己を発見することによって、行動や生活態度への洞察を行います。

それが心身症や神経症、うつ病などの精神障害の回復に有効と言われています。

1-2 内観療法の条件と実施方法

座位

内観療法には一定条件のもとで1週間を基本として行なわれる「集中内観」と日常生活のなかで継続的に短時間ずつ行なう「日常内観」とがあります。

集中内観の基本的技法は和室の隅を屏風で仕切り、そこに自由な姿勢で座ることです。午前6時より午後9時まで1日15時間、内観だけに集中して7日間を1クールとします。指導者の面接は1~2時間おきに行なわれ、1回の面接時間は3~5分間程度です。

1-3 してもらったこと・して返したこと・迷惑をかけたこと。

考え事

指導法は小学生時代より現在までを3年間ずつに区分し、まず母親を対象人物として

  1. してもらったこと
  2. して返したこと
  3. 迷惑をかけたこと

以上の3つのテーマについて具体的事実を想起するように指導します。対象人物は現在までの生活で人間関係が密接であった人を次々に選び、特殊なマイナス感情を抱いているような人物は、内観の後半時期になってから対象とします。

次に私が面談を行うときの振り返りの材料として用いる視点を2つ記載させていただきます。

1-4 あったもの、なかったもの、なくなったもの、あり続けるもの

母親

人は生まれたときから家族、生まれた国、生まれた土地、生まれた時代、など地球という星に生まれて「生まれたときからあったもの」がたくさんあると思います。

また対照的に、人と比べると「なかったもの」もあるでしょう。そして人生の過程で、人との別れや老いなど「なくなったもの」もたくさん感じます。ですが、人としての生死に関わらず「あり続けるもの」というものもあるかもしれません。

1-5 できたこと、できなかったこと、できなくなったこと、できるようになったこと

子猫と少女

これらはその人自身の能力の過程を表しています。人が悩む時は「なかったものやなくなったこと、できなかったものやできなくなったこと」に囚われていることが多いと感じます。

しかし、これらの悩みは人との比較や過去の自分との比較だということを知っていると生きやすさにつながるかもしれません。

そして、「できなかった・できなくなった・無くなった」このような悩みを解決することは困難であるか不可能であることが多いのです。それは、悩みを構成する要素に他者や過去の出来事が含まれているからです。

他者を変化させることと、時間を巻き戻すこと早回しにすることは、誰にもできないのです。だから、問題に立ち向かう必要もないのです。時間的尺度によって自分の悩みはどの位置に存在しているのかという所在をはっきりとさせる。それは、過去の要素や他者の要素を含んでいるのか、いないのかを明確にしてみるのです。

ありのままの事実を受入れた人だけが先に進めて、変化に疑問を感じてそこに執着する人はその間に取り残されるかもしれません。

まとめ

これまで、周囲の人とどのような手段・手法を用いて関係を構築してきたのでしょう。そのルーツを知るために、社会の様々な影響を受ける以前の『母親と私』との関係の持ち方に立ち返り、自分自身を十分に知ることが内観療法の特色です。自分を知ることで問題を解決するという、謙虚で地味だけれども責任感の強い手法は、日本で生まれ、日本人の特色に馴染みやすい療法といえるでしょう。その上で、能力や結果を問われる現代では、自分自身の感じたことと、実際に起こった出来事との区別。つまり、主観性と客観性の両者を持ち合わせて、その境目を読もうとする姿勢が、正しいと思える道へ迷わず行ける状態を保ってくれるのではないでしょうか。

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