何が正常か異常なのか?4つの基準とは

何が正常か異常なのか?4つの基準とは

先日『ピダハン―― 「言語本能」を超える文化と世界観』という本を読みました。南米アマゾンの先住民族「ピダハン族」は特殊な言語を操ります。ピダハン語には「過去」や「未来」はないため、彼らは「不安」や「後悔」を感じることはありません。彼らはよく、死にかけている犬は見殺しにし、乳離れした子供の世話はせず、幼児に包丁をあげて遊ばせたりもします。日本人からすると、少数民族ピダハンの文化は理解しがたいかも知れません。誰ひとり劣等感を感じている人はいませんし、毎日踊りながら楽しく暮らしています。ここまで堂々とされると、私たちも「こんな考え方もあるんだ」と謙虚に彼らを理解したくなります。彼らのなかには日本人として生きる私たちとは違う基準が明確にあります。本日はそんな基準について少しまとめてみたいと思います。

適応的基準とは

所属する社会集団の経済活動や行為規範に円滑に適応できているかどうかという基準であり、通常の社会生活を効果的に営めないような機能的障害がある時に異常と判定されています。日常的な社会生活を問題なく営んで社会規範を遵守できていれば正常ということであるが、適応的基準には周囲にいる他者が判断する社会的判断と本人自身が社会生活に適応できているかどうかを実感する主観的判断とがあります。

価値的基準とは

社会一般において大多数に共有されている価値判断・規範意識を元にした基準であり、許容範囲内の規範を遵守できるものを正常とし極端に逸脱した行動を取るものを異常とするものです。価値的基準は、判断者の依拠する理念体系や世界観・人間観によって正常と異常の境界線にズレが生まれてくるので相対的基準としての特徴を持つが、他者に物理的危害を加えたり法律に違反することが習慣化しているケースでは異常性の判断の確度が高くなってきます。

統計的基準とは

健康診断などにおいて、に尿や血液などの生理学的検査では、ある一定の範囲を正常とし、それより高い数値と低い数値は異常とされます。人間のもつ何らかの特質を数値化しうる測定法を調べてみると、通常、正規分布では鐘状の分布になり平均値を中心として一定の幅の基準は、数値という明確で比較しやすいものを用いるために客観的であるが、判別の数値はどこにあるかという問題があります。性格・心理・行動のパターンが統計学的な標準や平均に近いものを正常とし、標準や平均から大きく逸脱したものを異常とする基準である。統計的基準は、心理検査によって得られた多数の客観的データを収集整理して導かれるもので、統計学的な処理によって正常と判断される標準的数値の範囲を規定するところに特徴があります。 統計的基準は一見するとかなり客観的で実証的な基準に見えるのだが、サンプル(標本)を抽出する母集団の性質の違いによって『標準的数値の範囲』にはかなりの誤差が生まれてくる。心理アセスメントの結果の解釈には『統計的基準』が用いられることが多いですが、統計的水準を絶対視することには誤認・偏見のリスク があり、実際に向き合っているクライアントの訴えを丁寧に聴き取りながらクライアントの精神状態や生活状況を包括的に理解していく必要があります。

病理的基準とは

精神障害のいくつかは、典型的な表情を示すため、臨床経験を得るに従って判別が可能になる。その診断をマニュアル化したものをDSMと呼ばれるものがあります。病理学(pathology)と医学的健診・検査に基づく医学的判断の結果として健康と診断されれば正常であり、病気(疾患)と診断されれば異常とするものです。病理的基準ではICDやDSM、臨床的な経験知などに基づく医師の専門家としての判断が重視されますが、心理臨床家もクライアントの心理状態や精神症状の内容をより正確に理解して適切な対処法を選択するために、精神病理学に依拠する病理的基準について一定の理解をしておく必要があると言われています。

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